B-Future News 2022年6月号

今年も梅雨の季節がやってまいりました。「梅雨」の由来の一つに、梅が熟す頃に降る雨だからという説があります。梅の実やアジサイを濡らす雨は、なんとも日本らしい風景でいいものですね。しかし、そんな風流な梅雨の雨が、昨今ゲリラ豪雨に変わりつつあります。気象庁の調べによると、1時間に50㎜以上の大雨の回数は1976年から2021年で約1.4倍に増加しており、ウェザーニュースによると、昨年は全国で63,515回のゲリラ豪雨が発生しました。一方、今年は北米やアジアの一部で干ばつや気温上昇による穀物の不作が予想されており、国際経済にも大きなダメージを与えそうだと言われています。クリーニング業界では環境への取り組みが盛んに行われていますが、今後その加速に注視していく必要がありそうです。

ロシアのウクライナ侵攻が環境やクリーニング業界に与える影響について興味深い記事を見つけましたのでご紹介します。

(ウェブサイトCleanlink 『Invasion Of Ukraine Puts Sustainability Initiatives Under Threat』と『How Russia’s Invasion Of Ukraine Impacts The Cleaning Industry』を翻訳、引用しました。)

===引用ここから===

ウクライナ侵攻によって危機に瀕するサステナビリティへの取り組み

アシュキングループ寄稿

ウクライナ戦争が展開される中、ヘッドラインを飾らない別の戦争が起きています。この戦争は、今後何年にもわたって世界全体に害を及ぼす可能性があります。

「その戦争とは、環境に関するものです。」と、クリーニング業界でグリーンクリーニングとサステナビリティを提唱するスティーブ・アシュキン氏は言います。

「政治的な問題は別として、(ウクライナの)戦争は、気候を変える程の膨大な量のガスを放出し、大気に悪影響を及ぼします。」

アシュキン氏によると、戦争によってすでにウクライナや近隣諸国の水源や農地は汚染されているとのことです。

戦争と戦争が環境に与える影響について、アシュキンが懸念しているのは他にもあります。以下にそれらを挙げます。

  • キエフ近郊のシェベル製油所の爆撃は、何十億ドルもの環境破壊を引き起こしている。ウクライナ・ボランティア・ジャーナリスト・イニシアチブ(UVJI)によれば、「(シェベル製油所は)長い間、燃え続け、環境破壊は甚大なものになるだろう。」とのこと。
  • ウクライナでは15基の原子力発電所が稼働している。空爆で1基でも損傷したり破壊されたりすれば、チェルノブイリの再来となりかねない。
  • 化学、冶金(金属)、鉱山、核廃棄物の廃棄場はウクライナの至る所にある。もし、これらが破損したり、爆撃されれば、これらの地域全体の食糧や水の供給に多大なリスクをもたらすことになる。
  • 戦争に使用される爆薬に含まれる発がん性物質は、複数の健康被害を引き起こす可能性がある。ワイアード誌によると、兵士や民間人は、自動車のテールパイプを咥えるよりも危険なさまざまな大気汚染を吸い込んでいるという。
  • キエフ動物園には、ゾウやラクダ、国内唯一のゴリラなど、4,000頭の動物が飼育されている。動物園のスタッフによると、銃撃戦中は動物たちを落ち着かせるために鎮静剤を投与しているが、動物たちを安全な場所に避難させるチャンスはとっくに無くなってしまったという。

「戦争が始まる前、ウクライナはより環境に優しく持続可能な社会を目指し真剣に取り組んでいたのです。私は、こうした取り組みの多くが何世代にもわたって失われてしまうのではないかと危惧しています。」とアシュキン氏は付け加えます。

ロシアのウクライナ侵攻がクリーニング業界に与える影響

ザ・ヒル(米国の政治専門紙)によると、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻を受け、この1ヶ月の間に多くのアメリカのトップブランドがロシアと距離を置き、ビジネス関係を完全に断ち切ろうとしています。この傾向にはいくつかの理由がありますが、その最たるものは、起こっている暴力を非難するメッセージを送ることです。企業は当然、侵略する側と関わりたくないですし、社会的・政治的コストと損失を強く考慮しています。

先週時点で、300社以上の企業がロシアとの関係を少なくとも部分的に断ち切りました。引き続きロシアとの関係を維持している企業は、米国や同盟国からロシアに課されている厳しい制裁措置や、国境を越えて商品を輸送する際の安全上の懸念を考慮しなければなりません。これらの問題は、特にクリーニング業界およびサプライチェーンを通じた商品調達に影響を与える可能性があります。

多くのクリーニング業者にとって興味深いのは、衛生・消毒関連の製品にはトイレットペーパーのような必需品もあるため、(ロシアとの)ビジネスを継続せざるを得ないということです。このことを考慮しながらも、多くの企業は(ロシアに)反対の姿勢を取っています。例えば、化学メーカーのダウ社は、ロシアへの投資をすべてカットし、供給する商品は必需品のみとしました。また、ウクライナの難民に27万5千ドルを寄付し、被災地の従業員への支援も行っています。

さらに、多くのクリーニングブランドが加盟する全米製造業者協会(NAM)も、ロシアのサプライヤーとの関係をすべて断つと発表し、制裁を支持する姿勢を見せています。

クリーニングの専門家にとって、制裁措置の進展と、ロシアとの関係を断絶または大幅に縮小する企業を注視することは重要です。なぜなら、紛争によってサプライチェーンがさらに阻害された場合、製品の価格に影響するだけでなく、企業は製品の代替ソリューションを探す必要があるからです。

===引用ここまで===

 

前の記事

B-Future News 2022年5月号